「音楽物語 よだかの星(全文朗読付き)」熊本マンドリン協会第53回定期演奏会
「音楽物語 よだかの星(全文朗読付き)」熊本マンドリン協会第53回定期演奏会
主催:熊本マンドリン協会 協力/Comodo arts project studio1015
後援:熊本県文化協会 熊本県教育委員会 熊本市教育委員会 熊日 NHK熊本放送局 RKK TKU KKT FMK、KAB
FM791 九州作曲家協会 (学校法人)九州音楽学園 (一般社団法人)日本マンドリン連盟 熊本マンドリン協会会友会
よだかの星(全文朗読付き)(詳細解説はこちら) (主要テーマ楽譜の解説はこちら)
心やさしいよだかは、醜いという理由だけでみんなから「鳥の仲間のつらよごし」と嫌われ苛
められています。その上、よだかという名前の中に「タカ」という名が使われていることが気に
入らない鷹が「改名しないと掴み殺すぞ」と、よだかに迫るのです。
よだかは夜空を飛んで口を大きく開き、飛び込んで来る羽虫を食べることで生きています。一
匹の甲虫がよだかの喉でもがいたとき、自分自身が多くの虫の命を奪って生きていることに気付
き「どきっ」として泣きながら空を巡ります。悲しみの極みの中、もう何も食べないで「遠くの
空の向こうに行ってしまおう」と決意したよだかは・・・・・・・。
「よだかの星」は、当時第一級の科学的知識を持ち、同時にキリスト教や仏教(とりわけ法華経)
にも通暁して、38歳で亡くなる前日まで利他に生きた宮澤賢治の不思議な作品です。小説では
決して伝えることができない・童話だからこそ言える・童話でなければ語ることができないお話。
この曲は賢治が書き残した讃美歌風の旋律に始まり、やがて朗読が始まります。登場する生き
もの等がそれぞれ特徴あるテーマで示され、朗読の進行に合わせてテンポを調整しながら、曲は
切れ目なく演奏されます。朗読と音楽が響き合って普遍的なテーマに迫る宮沢賢治の世界。
点字翻訳:点訳ボランティアグループななほし会
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安田知博(朗読)プロフィール
熊本県山鹿市生まれ。京都市在住。
熊本県立盲学校在学中に全国高校放送コンテストで、3年間連続して全国優勝した。
1998年、甲子園の第70回記念選抜高校野球大会で、式典のアナウンスを務めた。
熊本障碍者音楽祭、日本障碍者芸術団の定期公演などで司会を担当。
NHKの「きらっといきる」と、その後継の「バリバラ」で、副音声の解説放送を担当。
現在、熊本を含む全国各地で、高校放送部の指導に当たっている。また、視覚障碍者などのた
めに書籍を音声化する「音訳ボランティア」の要請にも尽力している。
尺八奏者としても活動しており、山鹿市の八千代座などで自主公演を行っている。
メールアドレス yasudatomohiro@gmail.com
内藤濯に捧げる Poèmes des Chats du Passage Moineaux から ” Petit Rondo-point ” (内藤濯に捧げる「雀通りの猫のうたから」”プチ・ロンポワン”)
内藤濯(あろう)はフランス文学者。「星の王子さま」の翻訳者として知られます。「星の王子
さま」を翻訳したのは70歳のとき。94歳で亡くなるまで少年のような気持ちで生きたと伝えら
れています。
内藤初穂著「星の王子の影とかたちと」によると、内藤濯は熊本市の明十橋の近くで生まれ慶徳
小学校に通ったとあります。高二のとき上田敏の「海潮音」を読み、”翻訳とは美しい日本語の発
掘に尽きる” という作法を教えられ、後に和歌・音楽・演劇にも傾倒し「翻訳とは原文のリズムを
移す日本文学である」と語っていたそうです。
子供の頃は、明十橋のすぐそばにある洗馬橋辺りでも遊んだことがあるのではないでしょうか。
洗馬橋といえば「あんたがたどこさ」。弾んで調子がよい歌ですが、実はこの歌は変拍子です。そ
のことにヒントを得てこの曲を書き始めました
ロンポワン(Rondo-point)とはロータリー方式の交差点のことです。この方式に慣れないドラ
イバーは、進みたい道になかなか入ることができずに、ロータリー内をくるくると何度も回ること
になるそうです。ロンポワンのロンはロンド(=Rondo)で、円舞曲という意味があります。
また、この曲の構成はロンド形式となっており、同じテーマが何度も現れます。そのテーマの出
だしは変拍子で書かれていますが、変拍子であることを感じさせないような軽快なテンポで進行し
ます。
曲の始まりと中間部(トリオ)とおしまいでは「カフェ ロダンの歌(Rodin Rodin Rodin)」
が、装いを変えて登場します。
内藤濯の誕生日は、奇しくも七夕さまの7月7日。熊本県立図書館南面の庭に「星の王子さま内
藤濯文学碑」があります。
← 花巻市の宮沢賢治記念館玄関前に設置されているよだかの星のモニュメントです。(1989.4.10撮影)
甲田弘志プロフィール
1947年熊本市生まれ。九州音楽幼稚園在園時、故井上萬里子園長から毎日聞かされたレコードの影響を受け、10歳の頃からスコアを見ながらレコードを繰り返し聴き、対旋律発見の喜びや和声の妙を知る。独学で作曲・編曲・指揮活動45年。熊本マンドリン協会の定期演奏会では1976年の第8回以降、企画と指揮に携わり毎回作曲作品を発表。この間の500曲を越える編曲はボランティア演奏活動を楽譜で支えている。
富山和子著「森は生きている」に触発され作曲した「ミューズの森」は1999年JMU作曲コンクールで全国第2位を受賞。最近は現代の文芸作品を題材にした作曲に力を注ぎ「フルートとピアノのための『茶色の朝』」(F・パヴロフ著)、ピアノトリオ「せめて一時間だけでも」(P・シュナイダー著)を現代音楽祭で発表。主な作品に、マンドリンオーケストラのための「雀通りの猫のうた」全24集をはじめ、音楽物語・銀河鉄道の夜(朗読付き)、どんぐりと山猫、管弦楽と混成合唱のための「犀星 愛の詩集」、小雀物語(C・キップス著)、 絵画音楽(久永強氏の作品に寄せて)等がある。フルートとピアノのための「茶色の朝」、コンラート・ラテに捧げるピアノトリオ、管弦楽のための「ミューズの森」等がマザーアース社から出版されている。
現在、(学校法人)九州音楽学園監事・同非常勤講師、九州作曲家協会会員、熊本県文化懇話会会員。
← 星の王子さま内藤濯文学碑(写真提供:熊本日仏協会)