フルートとピアノのための「茶色の朝」 甲田弘志作曲

 

フルートとピアノのための「茶色の朝」(出版;マザーアース株式会社)
フルートとピアノのための「茶色の朝」解説
 この曲は、2003年にフランスで100万部を越えてベストセラーとなった「茶色の朝」(F・パブロフ著)(写真;上右)にヒントを得て作曲したものです。
 この物語は20分足らずで読める短い寓話で、新しく出来た法律に少しヘンだと感じながらも、自分の生活には直接関係ないことだからと、深く考えないままやり過ごしているうちに、人々の行動や考え方がいつの間にか巧妙に国家に支配され、全体主義へと進んで行く様子が描かれています。題名の「茶色」がナチスを連想させる物語となっていますが、過去のことではなく、現代の普通の国のどこでも起こり得るようなお話しです。
 曲は3楽章から成り、各楽章には作曲者によるタイトルが付けられております。


第1楽章「眠れぬ猫の独り言」
 冒頭。E音をピアノが強くたたいた直後にひとりでに微かに響き出す自然倍音のH音が、音になる以前のフルートの息の音に受け継がれて音楽が始まります。最後は不安と孤独の中、げんこつでピアノの鍵盤が強くたたかれます。

第2楽章「『今朝のニュースはホントかな?』と雀たちが」
 ニュースを知らせる時報音がピアノで奏されて、フルートとピアノの賑やかなおしゃべりが始まります。おしまいは疑問を抱えたまま、フルートとピアノは最後までハモることはありません。

第3楽章「沈黙の木陰、そいて再び・・・」
 フルートを吹きながら押し殺したような声を同時に出したり、フルートのキイを指で強くたたく奏法が取り入れられております。おしまいは第1楽章の始まりと同じE音が静かに消えて行きます。(解説:作曲者)


 ◯初演 2005年3月18日 あいれふホール(福岡市)
    「現代九州・音の創造空間(九州作曲家協会スプリングコンサート2005)

 ◯演奏 甲田文男(Fl)、西直子(Pf)


 ◯ISMN 979−0−65003−327−5

 ◯サイズ A4 全168小節

 ◯定価 各1,900円(税別)

甲田弘志プロフィール

 1947年熊本市生まれ。九州音楽幼稚園在園中に井上萬里子園長から毎日聞かされたレコードに興味を持ち10歳からスコアを見ながらレコードを聴き始め、オーケストレーションや和声の妙を知る。
 作曲は独学。「コンラート・ラテに捧げるピアノトリオ」「管弦楽のための『ミューズの森』」等をマザーアース社から出版。「ミューズの森」はJMUが実施した第6回作曲コンクールで池辺晋一郎氏から最高点を得て全国第2位に入賞。池辺晋一郎氏評「書式、構成ともにしっかりしている。拍節やリズム感覚も明晰。変化に富んでいてよくできた曲である」
 現在(学校法人)九州音楽学園監事・非常勤講師、九州・沖縄作曲家協会会員、熊本県文化懇話会会員。