コンラート・ラテに捧げるピアノトリオ 甲田弘志作曲

 

「コンラート・ラテに捧げるピアノトリオ」(出版:マザーアース株式会社)
コンラート・ラテに捧げるピアノトリオ 解説
 「雀通りの猫のうた」シリーズの中の1曲です。この曲は、ペーター・シュナイダー著「せめて一時間だけで
も」(写真:上左)とアニタ・ラスカー=ウォルフィッシュ著「チェロを弾く少女アニタ」(写真:上右)に強
い衝撃を受けて作曲されました。

 コンラート・ラテはポーランド生まれのユダヤ人。“水晶の夜”以降始まる強制収容所送りを逃れ、音楽を求める熱い情熱から彼はなんとナチス政権下のベルリンに潜伏。ゲシュタポによる監視と密告が横行する恐怖社会の中、コンラートはもちろん命がけ。彼の毎日の地下生活を陰で支える普通の市民も命がけ、彼に音楽を教える先生も命がけでした。

 戦後、トマス・マンからの米国移住の強い勧めを苦悩の末に断り「命がけで手を差し伸べてくれた人たちがここにいるからこそ」と生涯ドイツに留まり、ベルリンバロックオーケストラを設立し、助けてくれた多くの市民のために音楽で恩返しを果たしました。

 コンラートがピアノ、妹ガービがヴァイオリン、ガービの友だちのアニタがチェロを弾き3人で音楽を楽しむ子供時代もあったことから、ピアノトリオとして作曲されたものです。

 ピアノが鍵盤を強く叩くE音に対して、ひとりでに微かに響く自然倍音のH音で第1楽章が始まり、おしまいもH音で終わります。第2、第3楽章もH音で始まりH音で終わります。

 第1楽章 アレグロ モデラート(音楽>恐怖)

  ピアノが鍵盤を叩いた直後に微かに聞こえる自然倍音のH音から音楽が始まります。全音
 音階と“ドレミ音階”が複雑に絡み合う旋律や、不安定な和声、鋭いリズムに特徴があります。
 “水晶の夜”以降始まる強制収容所送り。自分もいつ連行されるのかという極度の不安と恐怖
 の中、それらに立ち向かい、ひたむきに音楽を求めるラテの内面世界を表現しています。


 第2楽章 アンダンテ カンタービレ(心と心と心)

  ショパンの曲によく現れるお馴染みの小さなフレーズ。それはコンラートもピアノで弾い
 たであろうと思われます。第2部は(イントロのあと)そのフレーズがピアノで奏され形を

 変えながらチェロ、ヴァイオリンに受け継がれ響き合い、次第に大きく発展して行きます。
 ここでは、潜伏生活を陰で支えた人々と、音楽を密かに教えた先生と、音楽を求めるコンラ
 ートとの深く暖かい真実の交流を表現しています。


 第3楽章 スケルツオ(渡米<報恩)

  喜びに満ちた音楽が、全音音階や変拍子で勢いよく駆け抜け、また、その喜びはときには
 異なる調性をも自然な姿で違和感なく同居させます。奇跡の生還を果たしたコンラートが、
 命がけで支援してくれた人々に対し、音楽で恩返しが出来る喜びを表現しています。

◯初 演  2015年9月27日 平成音楽大学サテライトステージ
      第35回九州・冲縄現代音楽祭

◯演 奏  龍野マリエ(Vn)、石垣博志(Vc)、藤本史子(Pf)

◯演奏時間 15分

◯ISMN  979−0−65003−293−3

◯サイズ  
W21 x H29.7

◯定 価  A4 全307小節 各1,900円(税別) 

楽譜の種類:スコアのみ または スコア+パート譜
    * この作品はパート譜ごとに分冊して販売されております *
        K3501-1 《Violin版》 Violin パート譜+五線譜スコア
        K3501-2 《Violoncello版》 Violoncello パート譜+五線譜スコア
        K3501-3 《Piano版》 五線譜スコア
     
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甲田弘志プロフィール

 1947年熊本市生まれ。九州音楽幼稚園在園中に井上萬里子園長から毎日聞かされたレコードに興味を持ち
10歳からスコアを見ながらレコードを聴き始め、オーケストレーションや和声の妙を知る。作曲は独学。これ
までに「フルートとピアノのための『茶色の朝』」、「管弦楽のための『ミューズの森』」等をマザーアース社
から出版。ミューズの森」はJMUが実施した第6回作曲コンクールで池辺晋一郎氏から最高点を得て全国第2位
に入賞。

 
(学校法人)九州音楽学園監事・非常勤講師、九州・沖縄作曲家協会会員、熊本県文化懇話会会員。